詳細:どんな世界的なパンデミックも、ミュージシャンの創作意欲を鈍らせることはできない。新型コロナウイルス感染症の危機が始まった当初、世界中のアーティストは隔離生活下での音楽制作のあり方について考えさせられた。ツアーや対面でのレコーディングが不可能な中、ニューヨーク出身のベン・ピラニとエボルフォ(ベンのバックバンド「The Means Of Production」のメンバー)は、ファイル共有という手段を用いることで、ソーシャルディスタンス下でもコラボレーションの精神が育まれることを証明した。そこで、既存曲のリミックスを交換するというアイデアが生まれた。各ミュージシャンは自宅でそれぞれのパートを録音し、それを街中を移動しながら繋ぎ合わせて音源を制作した。
ブルックリンのRoyal Potato Familyからリリースされた、Evolfoの2017年LP『Last Of The Acid Cowboys』収録の「Peachy」は、Piraniによる荘厳なリハーモニーが施されている。カコフォニーなストリングスとホーンで始まり、冬の日のポストバップ・グルーヴへと移り変わり、その上にMatt Gibbsのオリジナルボーカルが渦巻く。再びカコフォニーが戻ってきて曲の冒頭と最後を飾り、リスナーは詩的な歌詞に思いを馳せる。
ベン・ピラニの2018年リリースのアルバム『How Do I Talk To My Brother』に収録されている「Try Love」は、本質的な要素を削ぎ落とし、再構築されている。エヴォルフォによる新たな解釈は、焼けつくような太陽の光のようなファズギターと共に展開される。独特のグルーヴがヒートアップするにつれ、マットとラフはベンのオリジナルボーカルを重ね、曲のメッセージを伝えていく。2度の大きな転調を経て、曲はサイケデリックな未知の領域へと誘い込まれ、ディレイサックスの音色がアクセントとなる。