詳細:クリス・コーエンは昔から静かな子供だった。実際、この内向的な性格は、幼い頃から音楽を始めた理由の一つでもあった。言葉を使わずにコミュニケーションを取り、言葉という直接的な表現なしに他者と共感するためだった。この内向的な性格は、コーエンが強豪ディアフーフや自身の魅惑的なアートロックバンド、ザ・カーテンズで素晴らしい活躍を見せた際にも活かされ、ワイズ・ブラッド、カート・ヴァイル、ル・レン、マリーナ・アレンといったアーティストのプロデュースやセッションワークにも繋がった。その長い道のりのどこかで、コーエンは作詞作曲を始めた。それは自然なことではなかったものの、そのプロセスを通して新たな自己発見と自己認識、そして自分自身と世界を思いがけない角度から見る方法が得られると彼は気づいた。ここ10年の間に発表された、さりげなく複雑なポップスを織り交ぜた3枚の薄暗いアルバムからは、家族の不和への対処、高齢化への対応、そして社会の苦悩への理解といった、様々な啓示が溢れ出ていた。
しかし、コーエンが5年ぶりのアルバムであり、ハードリー・アートからのデビュー作となる『ペイント・ア・ルーム』でこれほど直接的に歌い上げる機会はかつてなかった。コーエンがこれまで一人で構築してきたモザイク状の音楽の層の中に潜んでいた意味は、このアルバムでは新たに明確かつ響き渡っており、リアルタイムで演奏するバンドによって初めて活気づけられ、強調されている。破壊的なメロディアスなオープニング曲「Damage」には国家による暴力の終わりなき瘴気が漂い、ホーンが刻むジャングル「Laughing」には現代社会の実存的疲弊が感じられる。これは、グルーヴ、ハーモニー、フックへの深い理解を通して友人たちと語り合うだけでなく、この不安な時代を歌い上げる歌を通してリスナーとも語り合っているコーエンの姿なのだ。
『Paint a Room』では、コーエンの音楽は温かな春のそよ風のように、愛しやすく、優しく感じられる。しかし、しばしば、目に見えない嵐の雲から吹き込んでくるかのように、何か重いものを運んでいる。『Paint a Room』は現実と向き合いながら、別の現実を想起させる。夜の散歩や隣人の風鈴の音が、想像力に無限の逃避を与え、心が自由にさまよう空間を提供する。崇高で陽光に照らされたこの10曲は、古い苦境から抜け出す夢のような新しい方法を探求し、問題をはっきりと提示しながら、踊り、歌い、新たな場所へと向かう。
『Paint a Room』では、ジェフ・パーカーが「Damage」でひらひらとしたホーンのアレンジを担当し、パーカーのコラボレーターであるジョシュ・ジョンソン(ミーシェル・ンデゲオチェロのグラミー賞受賞アルバム『The Omnichord Real Book』をプロデュース)がレコード全体を通してフルート、サックス、クラリネットのアレンジを担当している。