マチュー・カソヴィッツ（『クリムゾン・リバーズ』）は、『憎しみ』で映画界に旋風を巻き起こした。本作は、現代フランス、特にパリ郊外の低所得者層の居住地区における人種的・文化的不安定さを、生々しく、不安を掻き立て、視覚的にも衝撃的な視点で描いた作品である。行き止まりの郊外のコンクリートの環境で日々を無目的に過ごすヴィンス（『IRREVERSIBLES』ヴァンサン・カッセル）、ユベール（『コンスタント・ガーデナーズ』ユベール・クンディ）、サオド（『スリー・キングス』サオド・タグマウイ）――白人、黒人、アラブ人――は、フランスの移民や社会的に疎外された人々に人間味を与え、彼らの置かれた状況に対する憤りは沸点に達するまでくすぶっている。強靭な美しさを持つ『憎しみ』は、現代フランス映画の金字塔であり、フランスが抱えるアイデンティティの危機を力強く映し出している。