詳細: Paper Tigerの『All Over the Place』は、ムーディーでありながら力強い作品だ。力強いキックパターン、控えめながらもキャッチーなボーカルサンプリング、そして印象に残りながらもすぐに消えていく短い楽曲の数々。Paper Tigerは感傷に浸ることなくノスタルジアを感じさせ、90年代風の緊迫感と真摯さを巧みに表現している。リードシングル「A Different Trish」は、まるで『Run Lola Run』の疾走シーンを新たに生み出したかのようなドラムンベースのパターンを特徴としている。3分21秒という短い時間で構築され、解体される、ダークで緊密なエレクトロニック・ユニバースだ。Paper Tigerはヒップホップ・プロデューサーとして数々の名を馳せているが、ソロ活動によってそのスタイルは自由自在に展開されている。『All Over the Place』は、スローでドラムレスなアンビエント・ミュージックから、ハードでダークなダンスミュージックまで、あらゆるジャンルを探求している。しかし、作品全体に共通する感性も感じられる。コード進行はメランコリックで、テクスチャーのある音色は粒子の粗いフィルムのようで、楽曲ごとに異なるセクションからは、彼のポップスへの流暢さが感じられる。このレコードのために、ペーパーはデジタル機材の一部をハードウェア楽器に割り当てた。その理由の一つは、ハードウェア楽器ではできないことがあるからだ。「創造性の限界は、僕にとって新しいアイデアを素早く生み出す力になる。それに、シンセサイザーではメールや速報ニュースを受信できないからね」。ペーパーの努力の成果は、12曲収録の、独特の映画的な質感を持つアルバムに仕上がった。『All Over the Place』は、再生ボタンを押した途端、人生を映画のように変えてしまうような作品だ。ヘッドフォンから響くシンセサイザーの波は、交通騒音や見知らぬ人の話し声を飲み込み、家路につく途中でフレームレートが遅くなる。そして、あらゆるものに、新たな、意図的な意味が込められているように感じる。街角で携帯電話に張り付いている男は、共感できる普通の人となり、街の風景は、そこに紡がれるあらゆる人間の物語によって、突如として生き生きと蘇る。ヘッドフォンをつけたあなたも、その中の一人となる。