詳細： J・ディラの『Donuts』にインスパイアされたアンビエント・レコードはおそらくこれが初めてではないだろうが、Secret Pyramidの『A Vanishing Touch』は稀有な存在だ。『Donuts』はショートビートを集めたクラシック作品であり、『A Vanishing Touch』は14曲からなる40分間の組曲であるため、この2つは対照的に思える。しかし、他のジャンルと同様に、アンビエント・ミュージックも表面からは想像できないほど多くのことが隠されている。 アミール・アビーは最初から、長い熟考と綿密な練り上げといういつもの作曲プロセスを捨てた。「作品に命を吹き込み、息づかせ、微調整や編集にかける時間を大幅に減らした。そうすることで、これまで作ってきたものには欠けていたエネルギーと神秘性が音楽にもたらされた」。アビーは仕事が終わった後、毎晩作業に取り組んでいたため、アルバムは短期間で完成することができた。「それぞれのアルバムは、その瞬間における私の姿を捉えたスナップショットです。このアルバムでは、記憶の移り変わりについて考えていました。ある瞬間を永遠に捉える必要はなく、むしろサイクルの一部であると考えるべきだと。すべての始まりは、それに続く終わりと同じくらい重要で、際立ったものなのです。」 いつものように自宅で制作するアビーは、シンセ、テープループとプロセッシング、ホーン、オンド・マルトノ、ギター、ベース、オルガンを、多層構造の『A Vanishing Touch』に巧みに組み込んでいる。サウンドは変化し、滲み、フェードアウトし、浸透していく。リスナーはその瞬間に何が演奏されているのかを聴き取ることができる。「楽器の音を意図的にぼかして、簡単には聞き取れないようにした。だから、たとえ音に意識を集中していても、どこか儚いものがあるんだ」。一小節一節が深く、唯一無二で、神秘的で、束縛されていないように感じる。 これは、雰囲気への新たなアプローチです。時間の流れを超えて引き延ばすのではなく、瞬間そのものの魔法を捉えるのです。「A Vanishing Touchは、無常とそこから生まれる美しさについて歌っています。」