詳細:タウンズ・ヴァン・ザントは、類まれな優雅さと詩的な明快さで曲を書き、それを率直で雄弁、そして自身のイメージの乾いた美しさを意識した声で歌った。ヴァン・ザントがファースト・アルバムをリリースしてから10年後、何十人ものシンガーソングライターが彼に倣うことになるが、1968年に『for the Sake of the Song』をリリースした当時、彼はむしろ異色の存在だった。アルバムのプロデュースとアレンジからは、ジャック・クレメントとジム・マロイが彼の作品を必ずしもどう受け止めてよいか分かっていなかったのではないかという印象が時折漂う。ヴァン・ザントのデビュー・アルバムに収録されている11曲はどれも素晴らしい(使い捨てのノベルティ曲「Talkin' Karate Blues」でさえ少なくとも笑える)し、「(Quicksilver Daydreams Of) Maria」、「Tecumseh Valley」、そしてタイトル・チューンでヴァン・ザントが届ける感情の力強さは、これが彼のファースト・アルバムだという事実を裏切っている。しかし、いくつかの曲でクレメントとマロイは、ヴァン・ザントの音楽の捉えどころのない神秘性を、大げさな伴奏と深いエコーのかかった録音で表現しようと試みている。特に、「ザ・ベルベット・ヴォイシズ」の安っぽいコーラス、「アイル・ビー・ヒア・イン・ザ・モーニング」のありきたりなウェスタン伴奏、「サッド・シンデレラ」のチリンチリンと鳴るキーボード、「ウェイティン・アラウンド・トゥ・ダイ」のガタガタと鳴るパーカッションがそうだ。時折的外れなプロダクションにもかかわらず、「フォー・ザ・セイク・オブ・ザ・ソング」は傑作デビュー作であることに変わりはない。これらの曲を聴くと、ヴァン・ザントの才能がすでに完全に開花していたことがはっきりとわかる。作曲家としても演奏家としても、彼は類まれな才能の持ち主だった。バックコーラスにかき消されそうになっても、彼の才能は輝きを放ち、「フォー・ザ・セイク・オブ・ザ・ソング」は一流の才能による幸先の良いデビュー作だった。