詳細情報:フランスのアヴァンギャルド・ジャズ・ロックの先駆者としてジャンルを徹底的に解体し、再構築してきたVORTEXは、Zeuhlの攻撃的なヘヴィネス、チェンバー・ロックの複雑かつ優雅なアンサンブル、フリー・ジャズのポリテンピックでポリリズム的な構造、そして20世紀現代音楽の奥深い実験性など、様々な音楽要素を融合させ、独自のスタイルを確立した。緻密な構成と優れた演奏、そして録音のクオリティにおいて、『Les Cycles de Thanatos』は、やや急造感の漂う前作を遥かに凌駕する傑作に仕上がっている。前作がインパクト・サウンドと反復モチーフを基調としたハイテンション・ナンバーだったとすれば、今作は、様々な楽器を通して複数のモチーフをシームレスに織り交ぜながら、緻密かつ繊細なレイヤーで複雑な構造を作り上げることができるバンドの真髄を示している。特にB面全体を占める約25分のタイトル曲は、現代音楽の要素をロックに取り入れたチェンバーロック調の作品で、メシアンのモチーフをよりダークで強烈に表現している。ティンパニをはじめとする様々な打楽器と控えめな重厚なサウンドが響くイントロは、Vortexと同時期に活動していたベルギーのチェンバーロックグループ、Univers Zeroの傑作『(1979)』を彷彿とさせる、ダークで深淵な雰囲気を漂わせる。曲後半では、両耳を眩むほどに刺激する様々な打楽器の饗宴の中で、当時のVortexの音楽的完成度が頂点に達していたことが如実に感じられる。