詳細：ニュートックは、アラスカ西海岸近くのニングリク川沿いに位置する、辺鄙なアラスカ先住民の村です。非常に辺鄙で静かな場所であるにもかかわらず、ニュートックは気候変動の影響に直面してきました。永久凍土の融解、海氷面の低下、そして激しい嵐の影響により、ニュートックの沿岸部は劇的な浸食を受けています。現在、村は気候変動による浸食からより安全な、マータヴィクと呼ばれる新たな場所への移転を進めています。 2016年、シカゴ在住のビジュアルアーティスト、ジェニファー・クロニンは、変わりゆく環境を記録するため、ニュートックへの旅に出ました。帰国後、彼女は数年をかけて、この浸食されゆく風景を捉えた絵画とスクリーンプリントのシリーズ「Seen and Unseen」を制作しました。大規模な写実絵画で知られるクロニンは、ニュートックの描写にも細部へのこだわりを注ぎ込んでいます。緻密に描かれた風景は、白い絵の具のかすかな霞の中に消えていくように、徐々に解けていきます。「これらの絵画は、消えゆく風景を捉え、鑑賞者にこの風景と繋がり、その喪失について深く考えさせる空間を提供する試みでした」とクロニンは語ります。2019年、クロニンからギャラリーでのシリーズのオープニングで演奏を依頼されたことをきっかけに、音楽アーティストのパトリック・ミッチェル（別名ダスティ・パッチズ）とクロニンはこのプロジェクトについて話し合い始めました。その結果、ミッチェルは、クロニンの「Seen and Unseen」シリーズとアラスカ州ニュートックの物語にインスピレーションを得て、このアルバム「Newtok」を制作しました。 ミッチェルはシカゴ出身のマルチインストゥルメンタリスト、ソングライター、プロデューサーで、de Triomphe、New Color、Whiskey Wiseなど、シカゴDIYコミュニティで数々のプロジェクトを率いてきました。2017年にシンセサイザーに本格的に取り組み始め、Dusty Patchesというエレクトロニック・アーティスト名義で活動を開始しました。Dusty Patchesは、主にTeenage Engineering Pocket OperatorsとOP-1と共同制作したデビュー・プロジェクト『Filthy Four Track Machine: Volumes I & II』（2018年、Sooper Recordsより）をリリースしました。2020年には、モジュラーシンセシスを全面的に採用した初のプロジェクト『Nocturnal Emissions』をDablatoryよりリリースしました。 『Newtok』制作にあたり、ミッチェルは作品を構成するすべての音楽要素を作曲し、モジュラーシンセサイザーを用いた一回のライブパフォーマンスでアルバムを録音し、ライブミックスしました。アルバムは、広がりのあるアンビエントシンセ、エレクトリックおよびアコースティックなポストパンクギターのモチーフ、謎めいたボーカルサンプリング、ビンテージドラムマシン、そして鳥や海の音のように聞こえるモジュラーパッチを多用しています。アルバムの主題、アレンジの複雑さ、そして一回のライブレコーディングパフォーマンスとしての完成度の高さが、『Newtok』を他に類を見ない音楽体験にしています。 ニュートックについて、ミッチェル氏はこう語る。 このレコードは、テーマの探求でした。ジェン・クローニンがニュートック村から帰国後に制作した巨大なキャンバスを目の前にすると、畏敬の念を禁じ得ません。頭上にそびえ立つ作品の圧倒的な大きさに、あなたは引き込まれます。圧倒的な美しさ、荒涼感、切迫感、そして実際にはもう手遅れだという感覚。こうした視覚的なテーマと、それらが呼び起こす感情が、このレコードのサウンドと楽曲に繋がっています。デジタルなサウンドスケープには冷たさが漂いますが、自然と人間の有機的な音が、このアルバムを音楽的な物語の旅へと導き、繋ぎ止めています。 ニュートックは、気候変動の時代における人新世の悲劇を音楽で物語る旅です。マザー・アース・プランタシア、ブラック・モス・スーパー・レインボー、ボーズ・オブ・カナダ、ビビオのファンにおすすめです。