詳細： LPレコード。2016年発売。ワイズ・ブラッドの『フロント・ロウ・シート・トゥ・アース』は、近未来フォークミュージックと言えるでしょう。ナタリー・メリングの3枚目のアルバムは、その親密さの中に、タイトルの「地球」に込められた外の世界への憧憬が隠されています。メリングは、私たちを個人的な小宇宙から超個人的な大宇宙へと導きます。これらは、これまでのフォークソングの典型的なラブソングやプロテストソングとは一線を画す、愛の曖昧さを称える、切なくも痛ましい謎かけです。『フロント・ロウ』には、色褪せたカリフォルニアの美しさが漂っています。70年代西海岸で生まれた最高のフォークミュージックを彷彿とさせる、穏やかな誠実さ。甘くも不気味なハーモニー、脈打つようなヴィブラートの揺れ、そして恍惚としたコードが奏でる色彩。イントロから外省的な世界へと繊細に展開していく曲は、喜びに満ちたエネルギーの解放を感じさせます。しかし、この美しさは影に覆われています。暗い予感、疎外感、そして変化の受容。愛と喪失が宙吊りの錬金術のように調和し、シンガーソングライターの伝統に宿る土臭さが、まるで羽根のようにデジタルサウンドをまとう。メリングは、共同プロデューサーのクリス・コーエン、そしてスペシャルゲストと共に、ライブバンドの親密さとAMラジオの雰囲気が醸し出すポストモダンなエレクトリックな輝きを対比させている。実験的な装飾が、簡潔で思慮深いアレンジメントの中できらめく。