詳細:ドイツのピアニスト、ヴィルヘルム・バックハウス(1884-1969)は、1908年から60年にわたる録音を残しましたが、大きな転機となったのは1950年、HMVからデッカ・レコードに移籍した時でした。このセットに含まれる彼の最後のHMV録音は、あまり知られていないものの一つで、1948年にチューリッヒで行われた最後のHMVセッションのものが、ここで初めて再発されるようです。バックハウスは1930年代にスイスに定住し、戦時中もドイツで演奏を続けましたが、商業録音はHMVのドイツの系列会社エレクトロラに1枚だけ残しました。モーツァルトの「戴冠式」協奏曲を収録したこの録音は、作曲家生誕150周年の祝賀行事として実現したもので、非常に活気に満ちた作品となっています。バックハウスは、緩徐楽章で自らカデンツァや装飾音をふんだんに演奏していますが、これは当時のモーツァルトの演奏では非常に珍しいことです。この非常に充実したディスクには、バックハウスがなぜ HMV に幻滅し、デッカに移ったのかを初めて説明する完全な資料も収録されています。